青鶩丘陵の賢者の話

貴方が訪れたのは、民族音楽の集いとされる静かな丘。
少し奥まで歩みを進めると、ざわりと木々が音を立てる。
此処にくれば、何か手掛かりを得られると思ったのだが。
そう周囲を見渡す貴方の頭上から、ばさりと大きな羽音が響いた。

「ほう?人間か?音者か?だが迷いがあるな。大きな悩みだ」

貴方が頭上を見上げると、ホウ、という聞き覚えのある鳴き声。
人語を手繰るフクロウ…否、フクロウの姿をした音者が、其処には居た。

「儂には分かる、分かるぞ。音の迷いが、見て取れる」

「まるで彼奴のようだ。音者であることを捨てた___彼奴のようだ」

「誰も、彼奴のようになってはなるまい…せめてもの手向けだ、少し手を貸してやろう」

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HO【音を失った音者の話】
かつて、人の子を愛した音者が居た。真っ直ぐな音者だ。
彼奴は人の子の為に、己の音を犠牲にしたのだ。
彼奴は音者であることを捨てようと、かの人の子を愛した。
だが、音者は音を抱えてこそ音者。
音を捨てた奴は、音者から出来損ないの旋律…言うなれば、《音怪(オンカイ)》になり下がった。
音怪は音楽の化身ではなく、一つの音の化身。いびつな存在。
…音怪を元に戻す方法?さあな。そんなもの、あるのだろうかね。
音者は音者によって抱えるものが違う。一つの確固たる道があるとは思えんが…。
だが、諦めたら何も見えなくなるというのは、世の常だな。