樹海の中で見えたもの

貴方は、誰も立ち入らない深い森の奥へとやって来た。
此処になら、探しものがあるかもしれない。そう期待して。
良く音の響く樹海の中、ふと貴方は、一つの奇妙なものを見つけた。
まるで誰かの住処のように、丸く整えられた木の虚。

それは、人が立ち入らないこの場所に似つかわしくない赤い傘。
近寄って手に取ってみると、その下にもう一つ、気になるものが見えた。

《貴方はHO【赤い子供用の傘】/ HO【黒革の手帳】を入手する》

HO【赤い子供用の傘】
樹海にあるには違和感のある子供用の丈の低い赤い傘。
ネームプレートが付いているが、雨で滲んで名前の部分が読み辛くなっている。
読み解けたのは「ひだか み×」という文字列。
恐らく、この傘の持ち主の名前だろう。

HO【黒革の手帳】
どうやら日記のようで、最初の頃はミミズがのたくったような字しか並んでいなかったのが、日を増すにつれゆっくりと読める程度の字になっている。文章中に「ミーちゃん」なる人物が頻繁に出現し、この手記の持ち主は恐らく彼女に対して非常に強い親愛の情を持っていたというのが見て取れる。
しかし二週間ほど前からどうにも様子がおかしく、「あの子が欲しい」「あの子を手に入れるにはどうすればいいか」と只管に書き殴られていた。
最後に記されているのは「あと一文字足りない」という文字列である。