乙ヶ三音楽譚

貴方は知り合いの音楽家の中に、最近疲弊した様子の父親が居ることを知っている。
話を聞いたところ、
「娘の同年代の女の子が、最近よく病院に運ばれていくらしくって。同級生の子も倒れたらしくて、娘も毎日気が気じゃないんだ。全く、私からしたら次はうちの娘なんじゃないかって、心配で…」
とのことであった。
彼の疲弊を見る限り、相当なものなのだろうと察した貴方は、もう少し詳しく話を聞いてみることにした。

《貴方は事前にHO【乙ヶ三区立総合病院の現状】を保持している》
乙ヶ三区立総合病院は、乙ヶ三中央区に存在する最大規模の医療機関である。
ここ一ヶ月程から、急患として急性心不全の状態で現場に運ばれてくる十代の女性が後を絶たない。
本来若年層にそう頻発する病状ではないため、医者も頭を悩ませているそうだ。
患者は昏睡状態であり、連日見舞いの客が絶えない。
だがそんな見舞客の中でも、一人熱心に見舞いに向かうのを続けて居る少女がいるらしい。
患者の内の誰かと知り合いなのだろうか？
彼女はピンクの紫陽花のコサージュを身に着けていたそうだ。